苦味の基準

苦味も「閾値」を使います。

子供の頃は苦いものが嫌いでも、大人になると大丈夫なったりしますよね。

例えばコーヒーとかビールとか。そもそもビールはアルコールの時点で子供は✖︎ですが、苦味だけを考えられるノンアルビールでも子供の多くは美味しくないと感じるでしょう。

人間には先天的に苦味に対する感受性が高いのです。

それは苦いものは「毒」と捉えているからです。

その中で毒でないものを後天的に学習し「美味しい」と感じるようになります。

代表的なものは「カフェイン」ですね。

コーヒーやお茶の苦味成分です。

閾値は0.0007。なかなか低いですよ!

数値の低い方が苦味が強烈です。

カフェインは植物性アルカノイドで基本は「毒」です。

ただ、我々が取るレベルでは人体に影響のあるほどではないんでしょうね。

あと柑橘系に入っている苦味成分は「ナリンギン」といいます。

閾値は0.000025でカフェインより強烈です!

夏みかんや文旦などの爽やかな苦味ですね。あまりナリンギンは入ってないのでしょう。

酸味の基準

酸味の基準は「閾値(いきち)」という値で数値化されています。

この閾値を説明しているとわけがわからなくなるので、こういう名前だということで進めます。

で、この閾値が低いほうがより酸味が高いとされます。

簡単に言うと、ある感覚が1とすれば、その感覚になるのにどのくらいの量が必要がという値です。ですので、小さいほうがより濃度が高いということになります。

通常料理に使うお酢は「酢酸」です。これと混同してしまうのがゆずなどの柑橘系の酸味で「クエン酸」です。

「お酢」と「柚子酢」は同じような使い方をするので同系列と思いきや、JAS法ではお米から出来た「酢酸」と柑橘系の「果実酢」で分けられているそうです。

閾値は「酢酸」が0.0018、クエン酸が0.0023で少し酢酸のほうがすっぱさが強いです。

乳酸はヨーグルトなどの酸味で閾値は0.0016

リンゴ酸は白ワインの酸味です。白ワインで価格の高いものはリンゴ酸値も高いそうです。

では、赤ワインの酸味はといいますと乳酸です。高いワインは乳酸値が高いようです。

リンゴ酸が多い赤ワインはインチキだそうです。

ちなみに赤ワインや一部の白ワインでは、マロラティック発酵というのが行われるそうです。マロラクティック発酵とは、乳酸菌がワイン中のリンゴ酸を乳酸と炭酸ガスにする発酵のことだそうです。

リンゴ酸(マロ)が、乳酸(ラティック)に変化する発酵ということで、マロラティック発酵といいます。

次は苦味について書きます。

甘味の基準

味には基準があります。

まずは甘味です。

基本は「しょ糖(スクロース)」を甘味度1とします。

しょ糖とは砂糖の主成分です。

代表的なもので羅列していくと

キシリトール       0.6

ブドウ糖(グルコース)  0.6ー0.7

しょ糖          1

果糖(フルクトース)   1.8

ステビア         100ー150

アスパルテーム      100−200

サッカリン        250−700

こんな感じです。

キシリトールとはガムとかで聞いたことありますよね。

果糖は果物の甘さです。

ステビアはポカリスエットステビアなんて名前で聞いたことありませんか?

実はこのステビアは以前香港へ輸出をする際、ステビアが入っているとできなかったのです。幸いうちの製品はうどんですので使わないですけど、知らないところで使われている例が結構あったようです。

今はそういうことはないようです。

ステビアは植物由来の甘味料ですので、悪いわけではなく許可の関係だったようです。

アスパルテームは、よくコーヒーに入れたりする砂糖の代わりに出てくる甘味料です。

人工甘味料ですので以前は添加物扱いだったのが、今は解除されています。

しょ糖の200倍ほどの甘味度があるため、少しの量で甘味を感じることができるということで、ダイエット食品などにも使われています。

分子の構造上熱に弱く、煮物などに使っても甘味が飛んでしまうため、さっと溶かす程度のコーヒーなどが適しています。

このアスパルテームは発見の歴史が変わっていて、ガストリン(胃から出るホルモン詳しくはこちらでみてください)を研究していたチームが、いろいろなアミノ酸の配列を組み替えたりしていました。その時タバコを吸おうとしたら口元が甘かったので、ガストリンそっちのけでその甘味を調べていったところ、アスパルテームは発見されたのです。

今では考えられませんよね。喫煙しながら研究するなんて。当時は喫煙しながら研究することも普通だったようです。ま、そのおかげで見つかった甘味料で、2匹目のドジョウはないかと研究したけど、アミノ酸の配列での甘味料はアスパルテーム以外発見されていないようです。

甘味度が高いということは、少量で甘味を感じることができるのでカロリーや血糖値を気にされている方は、砂糖の代わりに取るのは良いことなんではないかと思います。

上に紹介したものは、健康被害の実例はまだないとのことです。

報酬系に訴える美味しさって!?

前回のブログで「報酬系に訴える美味しさ」について、最後まで書ききってなかったですね。

「報酬系に訴える美味しさ」

とは「報酬(お金などの対価)や労力を払ってでも手に入れたい、口にしたい美味しさ」のことです。

これはネズミの実験で、「油」が一番報酬に対する度合いが強いことがわかっています。

ネズミに普通の水を与えます。

そして次の日には普通の水を与える組と、油の入った水を与える組に分けます。

そして油の入った水の組には、ある装置を触らないと水が出ないようにします。

これを、どんどんエスカレートして行って、装置を何回も触らないと水が飲めないようにしていきました。そしたらなんと100回以上も装置を触り続けなくてはいけなくなるまで、油入りのみずを欲したそうです。砂糖入りの水は50回程度でした。

「やめられないとまらない」のお菓子も「小麦粉と油と塩」です。

そういえば揚げ物を乗せたうどんも「小麦粉と油と塩または出汁」です。

報酬系の食べ物ですね!

だから毎日食べに来ていただけるお客様が多いんでしょうし、僕を含めたスタッフも毎日お昼がうどんでも飽きないんでしょう。

ここで出汁の話題が出たので、授業で習った順番を少し変えて「出汁」について書きます。

日本で使う一般的な出汁は「グルタミン酸➕イノシン酸」です。

グルタミン酸は「昆布出汁」でイノシン酸は「鰹出汁」です。

実験によれば、昆布出汁単独、もしくは鰹出汁単独より、お互い30%〜50%混ぜたほうが14倍〜15倍出汁が増強されるのだそうです。

これは凄いことです!これをシナジーと言うそうです。

聞いたことありますよね。「シナジー効果」なんていいますから。

2つ以上の物や事や人が組み合わさることにより相乗効果が得られるという意味で使われますが、実はこの「シナジー」は旨味の相乗効果である「グルタミン酸➕イノシン酸」から来ているのだと受田教授はおっしゃられていました。

ちょっとした豆知識です。

この「出汁」はカロリー過多にならずにインパクトの味になるということで、現在非常に注目をされています。

海外ではグルタミン酸を昆布ではとらずトマトでとるようです。

パスタはトマト出汁ってことですね。納得しました。

この出汁も塩分の代わりに報酬系の美味しさとなりうるようです。

取りすぎても健康被害がほぼないのでいいですよ!

最近「出汁バー」なんてお店もあるくらいですからね。

出汁に少量の塩を入れたらホント美味しいです!是非!

やっぱり美味しい方がいい!

食品を食べる上で、直接的な喜びはやっぱり美味しさではないかと思います。

その、美味しさにも4つの感じ方があります。

1、生理的美味しさ

2、情報に基づく美味しさ

3、文化に基づく美味しさ

4、報酬系に訴える美味しさ

です。

まず、1の生理的美味しさとは、お腹がすいてどうしようもない時とか喉が渇いてどうしようもない時など、生理的欲求により食品を欲する状態です。

よくアスリートの間では「補給」とかいいますよね。食を楽しむというより必要だからとる。お腹がすいていれば、多少まずいものでも美味しく感じるし、喉が乾けば水が一番美味しいと感じます。

2の情報に基づく美味しさとは、簡単に言うと「美味しく感じる」「美味しく思ってしまう」という類です。もちろん本当に美味しいものもありますが、行列ができているラーメン屋に並んで食べたら美味しく感じるとか、SNSや食べログのようなインターネットでの評判で美味しく感じる。テレビで紹介されたなど、味本来の要素の他に情報が乗るのることでより美味しく感じるというものがあります。

3の文化に基づくおいしさとは、特産品その土地ならではの美味しさです。

うどん業界だと「讃岐うどん」何て言うのは文化ですよね。もちろん美味しいのですが、全てのお店が同じ味ではありません。しかし「讃岐うどんっておいしいよね〜」というように、1件1件のお店でなくその文化を美味しいと捉えているのです。

和食も日本に根付いた食生活で、海外の方からするとヘルシーだと捉えられています。日本人が長寿で比較的スマートな方が多いというのもあるとおもいます。

4の報酬系に訴える美味しさとは、簡単に言うと麻薬のようなものです。本当の麻薬はダメですが日常の食品でこれに該当するのが「油(脂)」です。ハイカロリーであまり摂取してはいけないとわかっていながらもついつい食べてしまう。「油に砂糖」「油に塩」美味しいですよね〜。心当たりがある方も多いと思います。

と言う私もその一人です。ドーナツやポテトチップスは止まらなくなりますもんね。

それを食べたいがためにトレーニングして動き回っていると言ってもいいくらいです。

しかし、この報酬系の「油」に置き換わるヘルシーなものもあります。それが「出汁」です。

出汁はグルタミン酸とイノシン酸を合わせたもので、体にも良いですしローカロリーです。

料理においてはNaClに置き換わるものでもあることがわかっています。

さて、先日のブログで味の5原則を書きました。

甘味

塩味

酸味

苦味

旨味

です。

しかし、この中で本来は甘味、塩味、酸味、苦味の4つだったようです。

しかし日本人の尽力により「旨味」が加わったのです。

英語表記でも「Umami」というそうです。

出汁文化の日本人ならではですね!

上記に書いた味を感知する場所は、基本「舌」です。

ある情報では、舌の場所によって感じる味が違う、と言うような事を聞いたことがある方もいると思います。舌先は甘みで、、、なんて感じです。

実際は全ての味をした全体で感じることができるようです。

ただしその感じ方に違いがあり、人間が喜ぶ味を先の方で、受け入れたくない味を奥の方でより強く感じるのだそうです。

やはり甘味は舌先「茸状乳頭(じじょうにゅうとう)」で強く感じます。

その次が塩味です。その奥が酸味で一番奥が苦味です。

では旨味はといいますと、舌の両側面です。「糸状乳頭」と言う場所です。

なぜ舌は味を感知し分けることができるのか!と言うメカニズムは長くなるし難しいので割愛しますが、理由としては、体に毒となるものを感知するためだそうです。

甘味を感知する受容体は3種類です。しかし苦味を感知する受容体は現在見つかっているだけで50種ほどあります。それほど繊細に感知しないのは体に毒を入れてはいけないからでしょうね。

と言うことで味については長くなるのでまた次回、よろしくお願いいたします!